「ふるさと納税のメリットって?」
「住宅ローン控除と併用できる?」
結論、ふるさと納税は住宅ローン控除と併用することができます。
ただし、例によっては確定申告をすべき人や、結果的に損してしまう方もいらっしゃいますので、しっかりと併用の注意点や条件を学んでいきましょう。
【この記事を読むメリット】
・ふるさと納税のメリットがわかる
・ワンストップ特例制度の活用方法がわかる
・住宅ローン控除との併用と注意点が分かる
「ふるさと納税」と「住宅ローン控除」の基本説明
詳細な解説を始める前に、「ふるさと納税」「住宅ローン控除」についての基本的な説明を行っておきます。
初めてふるさと納税を知った方や、住宅ローン控除の利用を検討されている方は、一度参考にご覧ください。
ふるさと納税の利用件数・利用金額は2015年度より3年間で300%も増加し、2021年現在では、非常に多くの方が利用しています。
そんな中で、住宅ローンを今後利用したり、現在住宅ローンを利用中で控除と併用したいと考える方も増えて来ていると思います。
「ふるさと納税」「住宅ローン控除」の両制度ともに、サラリーマンや自営業(フリーランス)の方が使える税制度ですので、各条件・注意点を理解し、上手く利用していけるようにしましょう。
1.「住宅ローン控除」とは?
住宅ローン控除(※1)は、個人が居住目的で家を購入・増改築を行った際に、年末時点のローン残高(※2)を基準に算出した一定の金額を、所得税から差し引く(控除される)という税制度です。
(※1 住宅ローン減税と表記しているサイトもあります。)
(※2 住民票を移転したタイミングによっても控除額が変動します。)
下記、住宅ローンの平均数値を使った控除の試算シミュレーションでは、控除期間合計で220万円もの控除が可能になっています。
【住宅ローン控除の例】
※住宅価格、借入額は住宅ローン借入の平均より算出した値です。
【住宅ローン控除適用額について】
| 居住の用に供した年 | 控除期間 | 各年の控除額の計算(控除限度額) |
| 平成26年1月1日から令和元年9月30日まで | 10年 | 1~10年目年末残高等×1%(40万円)(注) 住宅の取得等が特定取得以外の場合は20万円 |
| 令和元年10月1日から令和2年12月31日まで(★) | 13年 | [住宅の取得等が特別特定取得に該当する場合]【1~10年目】年末残高等×1%(40万円)【11~13年目】次のいずれか少ない額が控除限度額丸1年末残高等〔上限4,000万円〕×1%丸2(住宅取得等対価の額-消費税額)〔上限4,000万円〕×2%÷3(注) 「住宅取得等対価の額」は、補助金及び住宅取得等資金の贈与の額を控除しないこととした金額をいいます。 |
| " | 10年 | [上記以外の場合]1~10年目年末残高等×1%(40万円)(注) 住宅の取得等が特定取得以外の場合は20万円 |
| 令和3年1月1日から令和3年12月31日まで | 10年 | 1~10年目年末残高等×1%(40万円)(注) 住宅の取得等が特定取得以外の場合は20万円 |
(★)上記表の[住宅の取得等が特別特定取得に該当する場合]においては、通常10年である控除期間が13年に延長される特例が措置されていますが、新型コロナウイルス感染症等の影響により、控除の対象となる住宅の取得等をした後、その住宅への入居が入居の期限(令和2年12月31日)までにできなかった場合でも、次の要件を満たすときには、その特例の適用を受けることができます(新型コロナ税特法6条、新型コロナ税特令4条)。
・一定の期日(注)までに、住宅の取得等に係る契約を締結していること
・令和3年12月31日までに住宅に入居していること
(注) 新築については令和2年9月末、中古住宅の取得、増改築等については令和2年11月末。
※国税庁ホームページより情報・表引用
2.「ふるさと納税」とは?
ふるさと納税は、「生まれた故郷、応援したい自治体に直接寄付できる」という制度です。
ふるさと納税として寄付した金額のうち、2000円の自己負担分を除いては寄付金に応じた所得税・住民税控除が受ける他、寄付する自治体によっては納税額の最大30%相当額の返礼品が受けられる仕組みがあり、カタログギフト感覚※で納税が可能という魅力があるのです。
※国会審議にて「ふるさと納税がカタログギフト化している」と指摘されるほどで、寄付金目的の返礼品ラインナップが問題視されているため、返礼品の変更等が度々行われています。
【ふるさと納税と控除額上限目安】
納付者の条件によって控除上限目安は大きく変わりますが、返礼品がもらえる上に減税が狙えるのは非常に魅力的です。
最近では、「ふるさと納税」を活用した自治体のクラウドファンディング事業もスタートしており、同じく寄付金額に応じた控除が受けられる新しい試みも始まっています。
【さとふるクラウドファンディング】
※画像引用:「さとふるクラウドファンディング「【越前焼窯元を応援=Echizenyaki Support】コロナ禍乗り越え、伝統をつなぐ新しい力を!」より」
ふるさと納税・住宅ローン控除は「併用可能」!
結論、ふるさと納税と住宅ローン控除は併用可能です。
ただし併用を考える際には、ふるさと納税の「申告の仕組み」を学び、控除を満額受けられる方法を理解しておく必要があります。
本章では、ふるさと納税の税控除利用方法と、住宅ローン控除が受ける影響についてお話していきます。
【税控除(減税)を受けるには?】
ふるさと納税を行ったあと、税金の控除を受けるためには、「確定申告」又は「ワンストップ特例制度」を利用して申告する必要があります。
「確定申告」と「ワンストップ特例制度」は利用条件・控除対象等が変わります。
こちらについて具体的な違いを表でご紹介します。
<確定申告とワンストップ特例制度の比較>
| 確定申告制度 | ワンストップ特例制度 | |
| 条件 | ・確定申告が必要な人・年間の寄付先が6か所以上 上記どちらかに当てはまる人 | ・確定申告が必要ない人・年間の寄付先が5か所以内 上記両条件に当てはまる人 |
| 控除金額 | 同じ | 同じ |
| 控除対象 | ・所得税・住民税 10,000円のふるさと納税を行った場合<内訳>自己負担金 2000円所得是控除 800円住民税控除 7200円 | ・住民税(所得税分の控除も含む) 10,000円のふるさと納税を行った場合<内訳>自己負担金 2000円住民税控除 8000円 |
| 手続きの回数 | 年1回 | 寄付の度に申請 |
| 手続き方法 | <複雑> 確定申告書類&寄付金受取領証明書を管轄税務署へ提出する | <簡単> 申請書&本人確認書類を添付し、寄付自治体に郵送で送付する。 |
| 期限 | 翌年3月15日※確定申告の期限と同日 | 翌年1月10日 |
<ワンストップ特例制度について>
ワンストップ特例制度は手続きが簡単で利用しやすいといったメリットがあり、ワンストップ特例制度を利用すると「住民税の控除」となりますので、所得税に関連している住宅ローン控除には影響がありません。
(※所得税から控除しきれない住宅ローン控除分は、住民税から控除されます。)
確定申告の必要がないサラリーマンなどの給与所得者の場合は、年間の寄付先を5箇所以内に抑えて寄付し、「ワンストップ特例制度」を利用して控除を受けるようにすると、効果的に制度を活用できます。
<確定申告について>
確定申告を利用してふるさと納税分の控除を受ける場合、住宅ローン控除額に影響を与える可能性があります。
住宅ローン控除は「所得税に対して適用」されるため、ふるさと納税によって所得税が減税されると、間接的に住宅ローン控除が影響を受け、満額控除にならないケースがあるので気を付けましょう。
これは、「ふるさと納税の控除分が先に適用」されるからであり、その後に住宅ローン控除の適用が行われます。
所得税で控除しきれない分は、原則として住民税控除となりますが、住宅ローン控除による住民税控除額には限度が定められていますので、超過分は無効となってしまいます。
上記理由により、減税による恩恵を満額享受できない場合があるので、留意する必要があります。
ワンストップ特例制度を使いたい!「利用できる人・条件」とは?
先ほど紹介した通り、ワンストップ特例制度は住宅ローン控除との併用に最適な方法です。
ただし、ワンストップ特例制度には利用条件があるので、ご自身が制度利用可能かを予め確認しておきましょう。
特例制度の利用条件は、下記2つです。
・もともと確定申告を行う必要がない人
・ふるさと納税先の自治体が5個所以内であること
それぞれ、わかりやすく解説していきます。
条件1.「確定申告を行う必要がない人」
条件の1つは、確定申告の必要がない人(給与所得者)であることです。
ただし、給与所得者であっても下記項目に当てはまる人は確定申告が必要なため、「ワンストップ特例制度」の利用はできません。
【確定申告が必要な人】
・個人事業主、自営業、フリーランスの人
・一定額の公的年金を受け取っている人
・不動産など、その他の所得がある人
・株取引で利益を得た人
・給与所得以外の副業の年収で20万円を超える収入がある人
・会社員だが給与所得が2,000万円を超えている人
・2ヵ所以上の会社から給与を受けている人
※詳細はこちらをご覧ください「国税庁「確定申告が必要な方」」
条件2.「ふるさと納税先の自治体が5カ所以内」
もう1つの条件は、年間のふるさと納税先の自治体が5カ所以内であることです。
「納税先の自治体」の数をカウントするので、同じ自治体に複数回納税した場合は「1カ所」として扱われます。
確定申告を行う必要がない人で、ワンストップ特例制度を利用したい方はこの条件を頭に入れておく必要があります。
両条件のどちらか一方でも満たせない場合、ワンストップ特例制度の利用は不可となります。
ふるさと納税で気を付けるべきポイント
基本的なポイントを抑えたところで、最後にふるさと納税の注意点を解説していきます。
1.住宅ローン控除初年度は注意!「ワンストップ特例制度は利用不可」
住宅ローン控除初年度の方は、控除を受ける際「確定申告が必要」になるため、ワンストップ特例制度の利用条件である「確定申告が必要ない人」に当てはまらなくなります。
そのため、ワンストップ特例制度は翌年度以降の利用として考えましょう。
※間違えてワンストップ特例制度で申請を行ってしまった場合でも、確定申告をすれば申請が無効になるためご安心ください。
2.ふるさと納税の「控除上限を超えないように寄付する」
控除上限を超えて寄付すると、上限以上の減税は適用されないので、実質的に自己負担となります。
お得に利用するためには、ふるさと納税の控除上限を計算して、寄付総額が控除上限を超えないように活用しましょう。
また、「返礼品のカタログギフト化」が問題になったことから「返礼品の調達額は寄付の3割以下まで」と制限が加わったことで、還元率の足並みがある程度揃う形になりました。
3.医療費控除を受ける場合は「確定申告が必要」
医療費控除を受ける際には、原則として確定申告を行う必要があります。
また、ふるさと納税での控除計算は、医療費控除を各種所得控除に含めて扱う為、課税所得額が減少します。
よって、ふるさと納税の控除上限額も影響を受けてしまうことを考えておきましょう。
4.ふるさと納税の「返礼品は一時所得」
ふるさと納税の返礼品として受け取ったものは、一時所得として扱われます。
一時所得の合計が特別控除額の「50万円」を超えてしまった場合、課税対象になり「確定申告」が必要になってしまうため注意。
下記、一時所得に含まれるものとの兼ね合いを考えておきましょう。
【一時所得に含まれるもの】
一時所得とは、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の所得で、労務や役務の対価としての性質や資産の譲渡による対価としての性質を有しない一時の所得をいいます。
この所得には、次のようなものがあります。
(1) 懸賞や福引きの賞金品(業務に関して受けるものを除きます。)
(2) 競馬や競輪の払戻金(営利を目的とする継続的行為から生じたものを除きます。)
(3) 生命保険の一時金(業務に関して受けるものを除きます。)や損害保険の満期返戻金等
(4) 法人から贈与された金品(業務に関して受けるもの、継続的に受けるものを除きます。)
(5) 遺失物拾得者や埋蔵物発見者の受ける報労金等
5.「iDeCo」との併用も可能、よりお得な場合も
ふるさと納税と「iDeCo」は併用することができます。
iDeCoの積み立て分は所得控除となり、課税される所得が減少します。
課税所得の減少により、ふるさと納税による控除上限額も下がってしまうのですが、それ以上にiDeCoの減税メリットが大きいため、併用も視野に入れておきましょう。
検討中の方は、下記「iDeCoをやっている方のふるさと納税限度額シミュレーション」にて自身の控除目安を算出してみるのもオススメです。
<iDeCoをやっている方のふるさと納税限度額シミュレーション>
まとめ:ふるさと納税は住宅ローン控除やその他控除と併用できる!
ふるさと納税は各種控除を受けていても、併用することが可能です。
給与所得で生計を立てている方は、住宅ローン控除2年目以降にワンストップ特例制度を使うことで、住宅ローン控除に影響を与えないまま恩恵を受けられます。
その他の控除制度についても、控除上限額との兼ね合いを考えて、最も減税額が大きくなるように調整して併用することで、各制度のメリットを活かしていきましょう。
ふるさと納税は、控除上限額までなら、自己負担金の2,000円を除いた寄付金が減税という形で手元に戻りつつ、返礼品がもらえるという非常に有益なサービスです。
上手く制度を活用し、税控除と返礼品をお得に受け取りましょう!